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谷崎 [本]

 今度谷崎潤一郎の旧邸が取り壊しになるというNEWSを受けて、今谷崎を読み直してます。
実は今日の夜から夜行バスで神戸へ向かう予定なので、今旅の前の高揚感でとても胸が
高鳴っています。

「痴人の愛」を久しぶりに読み直してみて、なんだか新鮮な驚きを覚えました。
以前読んだのが10年前の17の頃。受ける印象もかなり変わりました。
恋に恋していた10代の頃は、ナオミの魔性さ、恐ろしさばかりが目に付きましたが、
こうして20代も後半になった今の自分には、もうひたすら譲治が哀れで、
譲治への同情の念の方が強いのです。
気持ちがナオミから譲治へ、寄り添う箇所がシフトしているんですね。
これだから読書は止められない。

ナオミという女が創られた要因は確かに譲治なのですが、あまりにもあんまりです。笑。
この本を読む前に源氏物語をぱらぱらと開いていたので、
紫の上と源氏。ナオミと譲治。
設定は同じでも、あまりの違いにとても可笑しくて。
今の時代で読んでも刺激的ですね~。

でもやっぱり私は「細雪」が好き。
同時並行で今読んでいて、「痴人の愛」の後に「細雪」に戻るとほっとします。
私の好きな本の5本の指に入ります。
「こいさん、頼むわ。」
で始まるこの、「こいさん」ですが、関西の方で末娘のことを指す言葉のようです。
この「こいさん」のイントネーションが10年くらい謎だったんですが、
最近教えてもらい漸く分かりました。
ちょっと嬉しかったことでした。


憧憬 [本]

 春の訪れにときめいています。
桜が咲き始めて嬉しい反面、今度の日曜にお花見をする予定なので、
もうちょっと待って!と空に心の中で毎日叫んでいます。
散り始めもそれはそれで趣があるので好きですけど。

私春になると必ず源氏を思い出すんですよね。
高校生の頃、源氏物語が大好きでよく読んでいたのですが、
源氏において春はとても特別に描かれていたので、
毎年桜が咲くのを見るにつけ、源氏の中のいろんなエピソードを思い出します。

特に印象的なのが、小さい頃の匂の宮が源氏にいう台詞で、
桜が散ってしまうのが悲しいから囲いを作ったらどう?
という台詞が確かありました。
それについて源氏は、
昔の人が空を覆うほどの袖が欲しいと言ったのより匂の宮は賢いね、
とか答えてたと思います。

あと確か、紫の上が亡くなったのも春でしたね。
源氏って人が死ぬのは大抵秋に設定されてるのに、
春の使者・紫の上は死ぬのも春だったんですよね・・・。
満開の桜の時期に確か死んでいったと記憶しています。
記憶も大分曖昧になってきたから、また読み返さなきゃ。

桜が散るのを惜しむ気持ちは今も昔も変わりませんね。
こんなに日本人の心を捉えて離さないあの魅力は何でしょうか?
桜の樹の下には屍体が埋まっている、と言っていたのは梶井基次郎でしたか。
桜のあの潔さに憧憬の念を覚えます。


解体 [本]

 神戸にある谷崎潤一郎の旧邸が取り壊しになるそうです。
谷崎は作品のイメージに合った住居を探す傾向があったらしく、ここで書いたのが「痴人の愛」。
まさに主人公・河井が住んでいた住居を思わせる作りになっているそうです。

谷崎は大学の頃によく読んでいて、エロチシズムの極みな文章・退廃的な雰囲気はやはり独特で今でもとても好きです。
私の中では最高傑作は「細雪」ですが、「痴人の愛」もなかなか。
ナオミに支配されていくまでの悶絶感。谷崎らしい題材です。
「鍵」なども題材は同じですけど、よりリアルで恐ろしいところが好き。

神戸となるとすぐに行けるようなところではないけれど、
来月一般公開されるらしく、やっぱり行きたいなぁ。
神戸ならライトのヨドコウ迎賓館も近いし、行きたいなぁ・・・行っちゃおうかな・・・。


帝国 [本]

 最近また寒くなってきたので長湯をします。およそ一時間くらい。
本を読みながら入るので、お風呂に入るにはそれくらい時間が欲しいです。
あんまり夢中になるとのぼせるので、言葉を拾って、それについて考えて・・・
を繰り返し、休みながら入ります。

今日はお気に入りの旧帝国ホテルの写真集を久しぶりに開きました。
「フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル」
著/明石信道・村井修 出版/建築資料研究社

旧帝国ホテルは私の敬愛するフランク・ロイド・ライトの設計した建築物です。
現在愛知の明治村に一部が移築されていて、3年ほど前に見に行ったことがあるのですが、
これがとても素晴らしくて・・・。
言葉では言い尽くせない。その瞬間、他には何も要らないと思えてしまうほどの、
世紀の芸術品だと思いました。
写真集では魅力の10分の1も伝えられませんが、旧帝国ホテルの歴史も含め、
建築当時の歴史的背景、関わった人々の挫折、ライトの苦悩が、少しだけ垣間見え、
自分自身も当時の立会人になった気持ちで、写真集を眺めます。

どうして私はこの場にいなかったのだろう・・・?
どうして私はこの建築物の全貌を見ることが出来なかったのだろう・・・?

時々、本気でそう思うことがあります。

でも建築物は生き物。だからこそ魅力なんですよね。
そろそろまたライトに会いに行こうかな。




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