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旧前田侯爵家別邸〜collection18〜 [建築]

ぼくは旅人ではない  
歩いているだけだ               (『ぼくは歩いている』田村隆一)
th_P1020493.jpg

旧前田侯爵家別邸(鎌倉文学館本館)/渡辺栄治(1936年)
全体P1020501.jpg

常に、次に見に行く建物を考えている。
何かの折に普段行かない場所や降りない駅に行くことになった時は、
必ず、その近くに「いい建物」がないか下調べをして出掛けます。
あてもなくふらり歩きすることも多いけれど、時間がある時は、大抵。

次に行こうと思う建物リストの中に、この鎌倉文学館は随分と長い間、
名を連ねていました。
もう10年くらいあそこは行かないと思いつつ、鎌倉には度々足を運んでいながら、
ここには行かず仕舞いでした。
その建物に、ようやく行って来ましたよ〜。

嗚呼!!この和洋折衷感がたまらない・・・!!屋根、瓦ですよ?!
空P1020496.jpg天井P1020499.jpg本入り口P1020500.jpg床P1020498.jpg空P1020491.jpg近くP1020497.jpg

中は残念ながら撮影禁止。
梅雨の時期もあって写真も随分と暗いものになってしまいましたが、
本当に素敵な場所でした。
長谷の高台にあり、ここから相模湾が見渡せます。

友人のライブが大船であったので、そりゃ鎌倉に寄るしかないと、
その日のプランを頭の中で思い巡らしていた時(実はこの過程が一番楽しいかも)、
鎌倉文学館で『田村隆一〜詩人の航海日誌〜』と云う企画展が行われていることに
突き当たりました。

本入り口P1020492.jpg

私は、好きだけど大っぴらに好きだ、と公言しづらい作家が何人かいます(笑)。
三島由紀夫も結構恥ずかしい。
(しかし私は大学時代、三島の写真を部屋に飾っていた・・・。
 あ!ちなみに鎌倉文学館は三島の『春の雪』の舞台にもなっています。)
エドワード・ゴーリーも好きだし・・・とこれ以上はやめておく。
田村隆一、その人もその一人です。

田村隆一は戦後を代表する詩人で、戦後詩に大きな影響を与えた人。
詩のみならず随筆も随分と残しているし、メディアへの露出もかなりあった人なので、
母の世代には有名な人だけど、私の世代での知名度はかなり低い。
知れば知るほど私の中での変人度合いが深まって行きます・・・。

やっぱり詩人で、世界名作劇場の『アルプスの少女ハイジ』や『フランダースの犬』の
主題歌の作詞で有名な岸田衿子(ちなみに岸田今日子の姉、谷川俊太郎の元妻)や、
鮎川信夫(これまた詩人)の妹などと、五度の結婚をしているし、
ウィスキー留学などと云う「ただ酒飲みに行っただけだろ!!」留学をしに
スコットランドまで行った人らしい。
私も行きたい、ウィスキー留学・・・。
要は女好き、酒好きだった人だと思うのだけれど、やっぱりなんと云っても、
かっこいい。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか
         (『帰途』田村隆一)

視力が肉眼と化したとき
物は心に生れ変る たとえ
地の果てまで旅をしたとしても
視力だけでは「物」しか見えない
         (『美しい断崖』田村隆一)

常々、人生を旅に例えることに違和感を感じていました。
もちろんそんなのは見ている方向の違いだとは思うけれど、
田村隆一の詩に出会って、私の中の違和感は行き場を得た気がしました。
まぁ、人生が旅だろうが旅が人生だろうが、どっちでもいいんだけど。
私にとって大事だったのは、どっちでもいいと云うその境地を得た感覚、です。

でもたまに、遠くに来たなぁ、と云う感覚が欲しくなる。
実際、遠くても近くても。
入り口P1020489.jpg

目が肉眼になるまでは
五十年はかかる
青年のときはイデオロギーや観念でしか
ものを見ていない
海の微風 木枯らしの音
世界の影の部分が見えてくるまでには
         (『人が人になるのには』田村隆一)

遠くP1020504.jpg


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コメント 10

piano

素敵な建物ですね♪
by piano (2008-06-26 07:46) 

サチ

お久しぶりです(^^)
建物の中の撮影が出来なくて残念でしたね。
心を動かすような詩に出会えるって羨ましいです。
by サチ (2008-06-26 10:06) 

kephis

鎌倉ですか、、、
わたくし、元々先祖が関東武士団だったようで、うずきます。
家紋に笹が入っていますし。
”いざ、鎌倉”、笹リンドウの源頼朝の時代から・・・・
好きな土地です。親戚も住んでますし。
最近行っていないな。


by kephis (2008-06-26 10:13) 

はなっぺ

鎌倉かぁ、なつかしい。
この建物、昔見たことあるかも。

私はどちらかというとヴィジュアル系で文学苦手な方wだけど、
好きだ〜って思える言葉、見つけてみたいなぁ。
by はなっぺ (2008-06-26 10:26) 

いたちたち

>pianoさん
でしょー^^
こういう建築に弱いのです、ワタシ(笑)。

>サチさん
どもども。
やっぱり私は文章の中で詩が一番好きです。

>kephisさん
行って下さい!行って下さい!

>はなっぺちゃん
はなっぺちゃんは地元の近くだもんね〜。
遠足やらで何回も行ったのでは〜?
言葉好きの私からすると言葉のない世界はコワーいものです。
全能ではもちろんないけど、生きて行く上で必要不可欠。
by いたちたち (2008-06-26 17:38) 

テレマーカー

言葉が作り出す世界、いいですねぇ。
鎌倉から茅ヶ崎って、結構文人が多いんですよね・・・。
by テレマーカー (2008-06-27 02:46) 

きむたこ

こぉんな素敵なお家がほしい・・・。(*´◇`*)ポワァン
by きむたこ (2008-06-27 12:10) 

Kinako

本当に素敵な建物ですねー。
私もこういう建物は好きです。
鎌倉という場所もいいなー。
中を見てみたかった。
by Kinako (2008-06-27 12:22) 

春分

田村ぁ、あー、「ホームレス中学生」の麒麟の田村かぁ と、思った私がいて。
はずかしい。
by 春分 (2008-06-28 13:40) 

いたちたち

>テレマーカーさん
そうなんですよ〜。鎌倉はやたらめったら作家が住んでます(笑)

>きむたこさん
ね〜。ワタシもワタシも!

>kinakoさん
今度鎌倉ツアー組みますか?!

>春分さん
田村!と云えば最近はね〜(笑)
ちなみに私、baseよしもと見に行って麒麟、見ましたヨ。
好きです。麒麟のネタ。

by いたちたち (2008-06-29 21:31) 

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