NARA:奈良美智との旅の記録 [映画]
『NARA:奈良美智との旅の記録』2006年/日本
奈良美智のドキュメンタリー映画が今上映されています。
昔から奈良美智は好きでした。
でもね、『好き』は『好き』でも『大好き』だった訳ではなくて『お気に入り』くらいでして、
展示会には必ず行っていた、とかそういった種類の『好き』ではなかったのです。
たまーに彼の絵を眺めて心を温めていたくらい。
そんな中、去年の夏に彼の絵を久しぶりに観た時に、とっても驚きました。
絵が、変わってるんです。
彼の描く女の子の表情が、今までの独特の陰鬱さとか意地悪さみたいなものが消えて、
とても穏やかで透明で瑞々しいものに変化していました。
あれ?あれ?
彼への興味は深まりました。
ちょうどその時、彼の出身地・青森で大規模な展示会をやっていたので、
その疑問を解消しに観に行こうと思ったのですが、青森という場所もあり、
その時は忙しく過ごしていたこともあったので、結局は行かず仕舞いでした。
この映画はその展示会に行き着くまでの奈良さんのお話し。
観終わった後のこの気持ちは・・・
とってもいろんなことがショックで上手く言葉に出来ません。
安堵。寂寞。焦燥。
彼の絵が変わったことへの彼のコメントは非常に印象深かった。
「今まで描けなかったものが描けるようになった、のと同時に、今まで描けたものが描けなくなった」
少しずつ回りとの調和が取れるようになり、大人になったと自分で感じる一方、
回りのことを考えすぎてダメになってしまった部分がある、と彼は考えているようです。
これって、分かると思う。
孤独が支えるものがあり、孤独が育てるものがある。
でも、調和が支えるものもあり、調和が育てるものもある。
今年に入って、私には大きな別れが三つほどありました。
これからの孤独はあるいは私を育てるかも知れませんが、私にとって、
今までその彼らと共有してきた多くに優るものは、この先何ひとつありません。
今はただ、やるべきものが残り、孤独が育てるものに期待を馳せる。
もう、
言葉は閉ざされ、瞳は閉じられたまま。
ゆっくりと、瞳が開かれるまで、お元気で。